Pianist 田村真穂 Official Website!!

ピアニスト田村真穂の公式ブログ。
好評を頂いておりました「mahopooパリ通信」の続編となります。日々邁進する私の記録、コンサート情報などを掲載します。
「いぶき」掲載記事 連載

院内コンサートをさせて頂きましたご縁から、医療従事者の皆さんや、患者様などに広く読まれている広報誌「いぶき」連載の原稿依頼を賜り、NHKニュースウオッチ9のキャスターを務められた河野憲治さんから引き継ぎ、今期、第3回目が発刊されています。

 

 

 

 

連載「演奏家として」     ピアニスト 田村真穂  

 

 

初めての渡航、経由地タイの空港でパリ行きの乗り継ぎチケットを紛失したことに気づいた私。事情を説明し、ここまで乗って来た飛行機に戻って探したいと必死に訴えていたら一人の黒人CAが時計を見るなり「急ぐわよ」と走り出しました。長い足の彼女を追いかけ広い空港を激走し、格納庫へと移動する寸前の機体に汗だくになって到着。間一髪で、座席の間に挟まっていた私の命綱、激安チケットを発見することができたのです。「よかった」と手を取り共に喜んでくれる彼女にお礼を言ったら、涙が溢れました。

やっとの思いで辿り着いたパリ市内。疲労と空腹を抱え、目に付いたビストロへ。メニューの「Saute de foie de veau」これが一番安いけどfoieって何だったったかな。思い出せないままに注文し、ともかく少しほっとし窓外を見ました。と、どうでしょう。みるみる空が暗くなり夜になりました。パリの日没が昼2時とは知りませんでした。急に薄暗くなった店内、運ばれてきたお皿にはラグビーボール型のお肉。思い出しました。foieは肝臓。私は「子牛のレバーソテー」なるものを注文したようでした。元々あまり得意ではないレバー。がっかりして一口。ところが、予想と異なる素晴らしい味わい、経験したことのない深い旨味。夢中で食べていたら外が明るくなり再び昼に。いったいどういうことなのでしょう。外に出たら大勢の人が空を見上げています。やっとわかりました。その日は十何年かに一度の「皆既日食」だったのでした。「日食」の単語もわからないし、ああ、私は大丈夫だろうかと思いながら留学生活はスタートしたのでした。

エッフェル塔からすぐのアパルトマンは、質素なベッドとグランドピアノだけが置かれた7階の部屋で、朝10時より音出し可。近くの教会の10時の鐘を待ち兼ねて練習を始め、12時の鐘で一旦休憩。その日も、鐘の音を時計代わりに、集中して練習していました。それは、ショパン作曲ピアノ協奏曲第一番の曲中、鐘の音を表すモチーフの部分を弾いていた時のことでした。窓外の実際の鐘の音が重なったのです。シンクロニシティ、身体に強い電気が走ったような激しい衝撃を受け、その瞬間、わかった!と思いました。この乾燥した空気、風の匂い、町中に聞こえる鐘の音、太陽の光、祈り、セーヌの霧…この場所でショパンは生きて作曲をしたんだ、それならこうだ、ここはこう、音はこうで、と夢中で弾いて、気がついたら夜遅くなっていました。その日を境に自分の音がどんどん変わってくるのを実感するようになりました。

精一杯吸収したい。可能な限り美術館を巡り、オペラ座の安い席で観劇し、ピアノの学校以外にソルボンヌ大学にも聴講生として通いました。その夏は、国際親善大使としてロータリー財団から要請された語学研修に参加することになりました。開催地は、モンパルナスからTGVで約1時間の仏中部ロワールの町「トゥール」。駅にはこれからひと月お世話になるホームスティ先のマダムが迎えに来てくれているはずです。 (連載い愨海)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

10:40 | 新聞掲載記事 | - | - | author : ピアニスト 田村真穂
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