Pianist 田村真穂 Official Website!!

ピアニスト田村真穂の公式ブログ。
好評を頂いておりました「mahopooパリ通信」の続編となります。日々邁進する私の記録、コンサート情報などを掲載します。
「いぶき」掲載記事   連載

院内コンサートをさせて頂きましたご縁から、医療従事者の皆さんや、患者様などに広く読まれている広報誌「いぶき」連載の原稿依頼を賜り、NHKニュースウオッチ9のキャスターを務められた河野憲治さんから引き継ぎ、今期、第2回目が発刊されています。

 

 

 

PDFで読まれる場合はこちら↓

https://www.kagawah.johas.go.jp/wp/wp-content/uploads/2020/05/ibuki-76.pdf

 

 

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「演奏家として」連載

 

25年前、たまたま訪れていた兵庫県西宮市で阪神淡路大震災に遭遇し、私は左右から倒れてきたタンスの間に寝ていて九死に一生を得ました。当たり前と思われる日常は一瞬のうちになくなることを目の当たりにし、私は何のために生かされているのだろう、私のできることはなんだろうと考えました。一度失った命と思えば何だってできるはず、毎日を精一杯に生きていこう。その時、覚悟ができたように思います。

 

ピアノを本気で勉強したいと思っている私を応援してくれた人がいました。「オペラの仕事してみるか?」指揮者の佐渡裕さんが声を掛けてくれたのです。私はコレペティトゥア(オペラの稽古ピアニスト)として明日から働くことになりました。右も左も分からない舞台の世界。稽古場に一番早く来るのは演出助手や大道具さんたち。私は彼らよりも早く行くことにしました。掃除をし、稽古までの準備を手伝い、しなくていいことをして怒鳴られたりしながら、稽古はまさに乾坤一擲、心臓がひっくり返りそうになりながら第一線の歌い手に合わせてピアノを弾く、そんな毎日から、華やかな舞台を作る裏方には想像以上の厳しさと大きな喜びがあることを教わりました。

 

総合芸術といわれるオペラの世界で、小澤征爾さんや、バレンボイム、ジェシー•ノーマン、パバロッティ、M•ベジャールら一流の音楽家や舞踊家、演出家、制作、美術、衣装、照明、字幕、舞台監督に出会え、共に舞台を作る仕事をさせて頂けたことは私にとって余りあるほどの得難い経験です。

 

ボローニャ歌劇場日本公演のツアー中、ホールのピアノ格納庫を無理を言って特別に開けてもらい、必死にソロの練習をしていた時のことでした。そうっと後ろのドアが開いて「ハロー」と小さな声。振り返るとそこにいたのは、ホセ•カレーラス氏でした。「邪魔して悪いけど稽古したいから伴奏してくれる?」というのです。その狭いピアノ庫で「フェドーラ」の第二幕のソプラノとの掛け合いのシーンを合わせた時、あまりの声の大きさと美しさと響きに圧倒され、弾き続けるのがとても難しかったことを憶えています。あの響きをピアノで作れたらなぁ。これは、今も私の研究課題となっています。

 

一流の人たちの側で学ぶうち気づきました。彼らは共通して、普通考えられないほどのたくさんの情熱、たくさんの勇気、たくさんの愛情、たくさんの忍耐力を持ち、自らの仕事をとても楽しんでいて、キラキラと輝いていながら謙虚で、己の芸術を深めることに人生を懸けている。あぁ、とてもかなわない、少しでも近づきたい、もっともっと勉強したい。

 

願いは通じ、晴れて国際親善大使として奨学金を頂きパリで勉強できることになりました。不安と期待に胸が高鳴ります。さあ、いよいよ出発!私は、奨学金を倹約するべく、財団から頂いた直行便の素晴らしい航空券を、乗継便で倍以上の時間を要する激安チケットに変更。何といっても初めての海外への旅です。結果は案の定。事件は起こりました。そこは乗り換えの地、バンコクの空港。「えっ!ない!チケットがない。」…茫然自失。命綱の激安チケットを紛失するという痛恨のミスを犯し、出発したばかりなのにもう終わった気分。こうなったらパリまで泳いで行くしかない?(連載へ続く)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

13:48 | 新聞掲載記事 | - | - | author : ピアニスト 田村真穂
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