Pianist 田村真穂 Official Website!!

ピアニスト田村真穂の公式ブログ。
好評を頂いておりました「mahopooパリ通信」の続編となります。日々邁進する私の記録、コンサート情報などを掲載します。
「いぶき」掲載記事

 

昨年暮れにコンサートをさせて頂きましたご縁から、医療従事者の皆さんや、患者様などに広く読まれている広報誌「いぶき」に、4回に渡る連載の原稿の依頼を賜りました。NHKニュースウオッチ9のキャスターを務められた河野憲治さんから引き継ぎ、今期、第1回目が発刊されました。

 

 

 

PDFで読まれる場合はこちら↓

https://www.kagawah.johas.go.jp/wp/wp-content/uploads/2017/07/ibuki-75.pdf

 

 

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「演奏家として」 

 

今日をはじめに4回にわたる連載の執筆依頼を賜りました。とても光栄なことながら、私はただの音楽家。立派な理論など持ち合わせている筈もなく、大変恐縮しておりますが、心に浮かぶままに誠実に自分の言葉で書かせていただけたらと思っています。

演奏家の仕事は、時空を超えて今に残ってきた偉大な作曲家たちの曲を演奏して現代に生きる人々に伝えることにあります。名曲は、永遠の美、変わらぬ美しさを持っています。私は、その偉大な作品を演奏するピアニストという仕事の尊さと重責を自覚しています。

宇宙の摂理を神と呼ぶなら、芸術は、神と人との合作です。演奏するにあたり、己が神の創造による人間であること、自分も自然の一部であるということを思い出すよう心がけています。ともすれば傲慢になりがちな自己と決別し、敬意をもってその作曲者と対話し、謙虚な気持ちでその曲に取り組まねばなりません。

そして、なかば神がかり的行為をもって、指が鍵盤の上を走るうち、自分が取り組んでいるこの作品も、万物の創造者たる神の作品であるということが、はっきりとわかる瞬間が訪れます。

これは、例えば夏の夕焼けの空や、白雪にきらめく冬の山、素晴らしい絵や文学作品、…。思わず手を合わせたくなるような、思わずため息を漏らすほどの瞬間と出会った時に似ています。幾度となく繰り返す経験は、ふつう慣れていってしまうものですが、この感動は別です。芭蕉の言う「不易」、世阿弥の言う「花」のように、その都度同じものでありながら、驚くべき新しさをもって私の中で育っていきます。

 

私たち演奏家が「創造する」ということは、何もないところから何かを作り出すということではなく、自己の中にあるものを大きく完成させていくことだといえます。景色や印象は瞬く間に消えてしまいますが、ふとした時に、何年も前のその時その所に還り、鮮やかに蘇り、また消えて、その体験は数を増すごとに大きく美しく育っていく…、これと同じなのです。

それにしても、「創造する」ということは大変なことです。私で言えば、例えば人の前で演奏するために1曲を仕上げるのには、

それは大変な時間と労力を要しますが、情熱にまかせてがむしゃらに練習を重ねればいいということではありません。

 

抵抗が多ければ多いほど美しいものができる。「艱難汝を玉にす」。大理石の彫刻が美しいのは、錬成した技術と気の遠くなるような努力によって、硬い石の束縛が解放され、石の中にすでにある美しい造形が掘り出されるからです。


私たち演奏家も同じ。

 

世阿弥の言った「花」のような美しい演奏がしたい。「秘すれば花」。いつか自分の花を咲かせられたらいいな、そう思って今日もピアノに向かっています。

 

 

 

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09:46 | 新聞掲載記事 | - | - | author : ピアニスト 田村真穂
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